2015年07月16日

新潮流によるポルトガル若手市場の変革

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「ブラジルW杯グループリーグ敗退」

ポルトガル代表に突きつけられた現実であった。国内では「クリスティアーノと10人の仲間たち」と揶揄されるほどに、エースへの依存体制から脱却できずにいた。さらに畳み掛けるように、コエントランら中心選手に負傷者が続出したことで代表は満身創痍に。選手層の薄さを露呈し、若手が育ってないのではないかとの不満が国内から噴出した。

筆者もW杯直後にはそのような想いを抱いていた。果たして、本当に有力な若手選手は育っていないのだろうか。

答えはノーである。

当時の世論には反して、現在のポルトガルには世界に誇れる若手選手が多く存在している。その証拠として、2015年チェコで開催されたU-21欧州選手権でポルトガルは準優勝に輝き、優勝したスウェーデンの3名を超える5名もの選手がベストイレブンに名を連ねた。ポルトガルが世界のトップクラスで活躍し得る若手選手に恵まれている証であろう。

この若手の豊作期とも言える状況の一端を担っているのは、紛れもなくスポルティングである。ブラジルW杯にも出場し、U-21欧州選手権ではMVPに輝いたウィリアン・カルバーリョを始め、A代表とU-21代表を兼任するジョアン・マリオや、クラブで主力〜準主力として活躍するカルロス・マネやトビアス・フィゲイレードなど、有望な若手選手をU-21代表に送り込んでいる。国産の若手選手を手塩にかけて育てる文化があるスポルティングが、今後も豊作期を支えるのは間違いない。

しかし、ここで特筆すべきなのはスポルティングではない。フィーゴやクリスティアーノ・ロナウド、ナニらを排出したスポルティングが、ポルトガルの若手市場を席巻したのは今に始まった事ではないからだ。筆者は、最近新たに見られ始めた「ある潮流」こそが、これからのポルトガルサッカー界の若手市場を形成していくと予想している。そして、この風潮はポルトガルが長年抱えてきた重大な構造的問題をも解決し得るのである。

この新潮流の代表的な産物こそが、前述のU-21欧州選手権においてベストイレブンにも選ばれ、ポルトガル代表のエースに君臨したベルナルド・シウバである。同選手は、ベンフィカでは強力な外国人助っ人の陰で出場機会に恵まれず、膨大な資金力を武器に積極補強を進めていたモナコへ移籍した。富豪の地で同郷監督レオナルド・ジャルディンの指導を受けたことで、その才能が花開いたのだ。

本事例からも帰納される「新潮流」とはすなわち、外国人助っ人とのレギュラー争いに敗れた若手選手の国外CL級ビッグクラブへの移籍である。

筆者はこれまで、ポルトガルサッカー界が抱える構造的問題点を声を大にして唱え続けてきた。すなわち、ポルトやベンフィカなどのクラブが勝利を過度に追求するあまり、リーグが強力な外国人選手に寡占され、国産若手選手の育成機会が奪われていることである(参考:筆者過去記事『ポルトガルサッカーの縮図としてのFCポルト』http://goo.gl/304obQ)。この深刻な問題によるポルトガル人若手選手の競争力低下こそが、ブラジルW杯において同国が期待外れに終わった一因なのかもしれない。しかし、(後述するが)これまでの国外移籍とは明らかに異なる新潮流下の国外武者修行より、多くの若手選手がCLレベルの経験を積むことで、ポルトガル代表が世界のフットボール界を再び席巻する可能性があるのだ。

このような若手選手の国外移籍を「新潮流」などと取り立てているのだから、当然これまでのポルトガル人若手選手の移籍とは毛色が異なる。本題に入る前に、まずは伝統的な国外移籍の状況を詳述したい。

これまでの常識として、外国人助っ人とのレギュラー争いに敗れ、出場機会を失った若手選手が置かれる状況は、主に以下の5パターンに分類された。

1. 所属クラブでの飼い殺し
2. Bチームでの武者修行
3. 国内下位チームへの移籍
4. 国外上位リーグ(スペインなど)下位チームへの移籍
5. 国外下位リーグ(トルコやブラジルなど)チームへの移籍

1つ目の状況は、すでにBチームレベルを超えている選手が陥りがちである。シーズン途中に、買い手が見つからなかったり、クラブがベンチには控えていて欲しい一応の戦力とみなしたりした場合に散見される。2つ目の状況は、AチームとBチームを行き来するクラスの選手に多い。そして、これら2つの状況に置かれていた若手選手が、シーズンを終えて移籍先を模索する際に、上記3-5の3パターンの選択を迫られるのである。3つ目の代表的な例は、U-21代表トゼ(ポルト→エストリル、2014-15)や、今季よりポルトへ復帰するセルジオ・オリベイラ(ポルト→パソス)などが挙げられる。4つ目の例は、ロペテギ監督下で構想外となった元ポルトのリカーが良い例だ。ポルトで戦力外となり、リーガ・エスパニョーラのラージョへ移籍した。最後5つ目の例として、ジョズエの名前を挙げたい。同選手はパソスの3位躍進に貢献し、鳴り物入りでポルトへ入団したが、思うような結果を残せなかった。リカーと同じくロペテギ監督の構想に入ることができず、トルコのブルサスポルへ活躍の場を移した。

これら5パターンからも明白なように、これまでは、ポルトやベンフィカのようなクラブで出場機会を獲得できなかった選手が、所属クラブと「同格」もしくは「格上」のチームへ移籍することはごく稀であった。しかし、前述のベルナルド・シウバのように、近年は彼らがCL級の国外クラブに即戦力として迎え入れられているのである。これまでの「格下」チームへの移籍とは明らかに種類が異なるのは、誰の目にも明白だろう。

ここで一つの疑問が生じる。

ポルトやベンフィカで出場機会を奪取できなかった若手選手が、モナコやバレンシアなどのより強力なビッグクラブで出場機会など得られるのだろうか?

イエス・ノーで解答を提示する代わりに、3選手の例を挙げよう。1人目が、既出のベルナルド・シウバである。ベンフィカのAチームでは公式戦3試合出場のみに終わった同選手が、新天地モナコでは45試合10ゴールと大爆発。レバークーゼンとの一戦では、念願のCLデビューを果たし、若干20歳ながらチームの主力として躍動している。2人目は、ベンフィカAでは公式戦19試合1ゴールに沈んだイバン・カバレイロだ。最初の移籍先はリーガ・エスパニョーラのデポルティボであり、これまでの伝統的な国外移籍パターンを辿っていた同選手だが、2015-16シーズンからは新潮流に乗りモナコへ。移籍金1500万ユーロ、5年契約という破格の条件で迎え入れられた。プレシーズンでは、早くもスタメンデビューを飾り、ゴールを決めている。ベルナルドとカバレイロはU-21欧州選手権でベストイレブンに輝いた、まさにモナコとポルトガル双方の未来を担う、将来を嘱望された若手選手である。3人目は、バレンシアに所属するジョアン・カンセーロである。ルイゾンやガライといった世界的な名DFの陰で、ベンフィカAでは2試合の出場にとどまった。翌年にレンタル移籍したバレンシアでは13試合に出場し2021年までの長期契約を勝ち取った。本契約となり、今後はより多くの出場機会を手にすることだろう。

このように、近年は、ポルトガルでは外国人選手とのレギュラー争いに敗れた若手選手が国外のCL級クラブへ移籍し、母国での出場機会よりずっと多くのゲーム経験を積んでいるのだ。紹介した3選手はポルトガル代表としてU-21欧州選手権にも参加しており、数年後にはフル代表での活躍も期待されている。彼らが出場機会を求めて移籍した強豪クラブでトップレベルの経験を積んだことが、同代表が準優勝という好成績を残せた一因だろう。

なぜ、これら強豪クラブは、母国で試合に出られるレベルにない若手ポルトガル人を獲得するのだろうか。そこには、彼らの実力を熟知し、将来性に期待を寄せる同郷監督の存在があった。この新潮流を生み出したのは、国外へ活躍の場を移したポルトガル人若手監督であると言っても過言ではないほどに、彼らが新潮流を主導する重要なファクターとなっている。

国外の若手ポルトガル人選手を語る際に度々メディアにその名が挙がるのは、バレンシアとモナコであろう。この2クラブは、若手ポルトガル人選手の獲得に特に躍起になっている。バレンシアのヌーノ・エスピリト・サントとモナコのレオナルド・ジャルディン両監督は、母国若手選手の能力に大いなる可能性を見出し、彼らにCL級の舞台を用意することで成長を促している。これらビッグクラブが若手ポルトガル人選手を重宝する陰には、同郷の若手を信頼してチームの勝利を託し、母国サッカー界の未来を憂うポルトガル人監督の姿があるのだ。今後は、バレンシアやモナコだけにとどまらず、ビトール・ペレイラが指揮するトルコのフェネルバフチェや、マルコ・シウバが監督就任したギリシアのオリンピアコスも新時代の波に乗っていくことだろう。(参考:筆者過去記事『「ポルトガル・ドリームチーム」を推し進める3クラブ』http://goo.gl/40jAeo)

母国では公式戦経験を多く積むことができなかった若手ポルトガル人選手が、同郷監督のサポートのもとで、スペインやフランスなどの上位リーグやCL・ELといったヨーロッパ最高峰の舞台を体感できる新潮流は、外国人選手の寡占による国産若手選手の育成機会阻害というポルトガルサッカー界が抱える深刻な問題を解決し得る。この新たな風潮によって、国内の「ポルトガル人選手の空洞化」が加速するのは確かである。ポルトガルリーグのレベルを超越したスター選手だけでなく、将来リーグの中心選手となるべき若手選手までもが国外へ移籍するのだから当然であろう。しかし、この国内空洞化という確かなデメリットを凌駕するほどのメリットが、新潮流によって生み出されるのである。

これまでの伝統から、外国人選手によって寡占されたポルトガルリーグが抱える問題点は主に2つあった。まず、レギュラー争いに敗れた若手選手が飼い殺しされた、もしくは下位チームで低質な試合経験しか積めなかったゆえに、彼らの成長が阻害されたこと。そして、それに伴うポルトガル代表の弱小化と、コロンビアなどポルトガルリーグで選手の育成に成功した他国代表の強大化である。つまり、外国人選手の寡占により「ポルトガル代表の絶対的かつ相対的な弱体化」が引き起こされた。

しかし、近年の新潮流により代表の弱体化を食い止めることができるのだ。まず1点目に、国外CL級のクラブへ移籍した若手選手が、国内で経験でき得た以上の高質な試合経験を積むことができること。2点目に、ポルトガルでは敗者の烙印を押された彼らが、実際にはビッグクラブの即戦力となれることを証明したことである。新潮流の1期生とも言える若手選手が、「埋め潰された」実力を世界に見せつけたことで、今後は2期生、3期生が後を追うことが予想される。すなわち、若手ポルトガル人選手の国外移籍の裾野が広がり、より多くの選手が高質な試合経験を積めるのである。U-21ポルトガル代表が証明したように、新潮流に乗る若手選手の成長が母国代表を強化することは言うまでもない。

今後、ポルトガルの強豪クラブは、若手を国外に売却した資金で外国人選手の買い漁りを加速させるだろう。その証拠に、レアルのカシージャスを電撃補強したポルトのような、これまでの外国人助っ人とは毛色の違う有名選手のポルトガル到来という「逆方向の新潮流」までもが生まれ始めている。ポルトガルリーグから国産選手が姿を消すことは、母国のサッカーファンを失望させ、サポーターのクラブへのロイヤリティを低下させるなど、新たな問題を引き起こす可能性は確かにある。しかし考え様によっては、このような逆方向の新潮流がポルトガルクラブを強大化させ、ヨーロッパの舞台でのプレゼンスを高めるというメリットもある。また、強力な外国人を抱えるポルトやベンフィカに、母国の若手選手を多く抱えるスポルティングやブラガといったクラブが挑む構図が極端化すれば、ポルトガル人若手選手は国内でも十二分に成長できる。

「新潮流」とそれに伴う「逆方向の新潮流」が生み出され、前者によってポルトガル人若手選手が成長し、代表が底上げされる。後者によってポルトガルクラブがヨーロッパのコンペティションで存在感を増す。またはスポルティングなどのクラブが彼らに対抗することで、国内で若手選手を強化できる。代表のエース、クリスティアーノ・ロナウドもすでに三十路を超え、彼にばかり頼ってはいられなくなった。その状況を憂うポルトガル人監督によって、偶然か必然か生み出されたこの新潮流こそが、ポルトガルの若手市場に大変革を与え、ポルトガルサッカー界が抱える重層な閉塞感を打ち破る鍵となるだろう。

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2015年07月09日

【保存版】2015-16ポルトガル1部リーグを戦う18チームの監督人事

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ベンフィカのリーグ2連覇及び2冠達成とともに幕を閉じた2014-15シーズンのポルトガルリーグ。プレシーズンに突入し、来季の躍進に向けて各クラブが監督人事に着手している。すでに、歴史に名を残すような禁断の監督移籍も実現しており、今季も例に漏れず、ポルトガル人監督の動向に注目が集まる。

昨季は多くのクラブで玉突き移籍が発生した(筆者過去記事『ポルトガルリーグ激動の監督大移動 http://goo.gl/UdzydY』参照)。今季は、国内移籍や、Bチームからの昇格、海外をめぐる監督の輸出入など、様々な移籍パターンが見受けられた。そこで、昨年に続き、来季1部リーグを戦うクラブの監督情報をまとめてみた。1部残留15チームのみだった前回とは違い、今回は、2部からの昇格組も含めた全18チームを網羅している。

紛らわしいので、使用語の定義を一度共有
    
    「昨季」→2013-14シーズン 
      →(ベンフィカがリーグチャンピオン)
    「今季」→2014-15シーズン
      →(ベンフィカがリーグ2連覇)
    「来季」→2015-16シーズン

<1位 ベンフィカ>
ジョルジ・ジェズス(来季:スポルティング)
→ルイ・ビトーリア(前:ギマラインス)

6年間でベンフィカに10タイトルをもたらした老将ジョルジ・ジェズスの退任が決定。今季は、ベンフィカを2年連続でリーグ王者に導き、自身もリーグ最優秀監督に選出された。退任は、契約延長交渉で約半額の減棒を提示されたのが決定的であったようだ。また、本人曰く「ベンフィカでの仕事はやり切った」とか。国内外のビッグクラブからの関心が伝えられた中、ライバルのスポルティングへ、歴史的な禁断の移籍を決断。ポルトガル全土を震撼させた。

後任には、ギマラインスを5位に導いたルイ・ビトーリアが就任。3年契約を結んだ。同氏はベンフィカのユースチームを率いた経歴があり、クラブへの適応には問題ないだろう。懸念点があるとすれば、ヨーロッパ大会での実力が未知数なところか。先日、ルイス・フィリペ・ビイエラ会長がCL制覇の夢を語った。その実現とまではいかずも、リーグ3連覇とCLグループリーグ突破は全サポーターから求められる結果。過酷なプレッシャーに打ち勝つことができるか。

<2位 ポルト>
フレン・ロペテギ(続投濃厚)

前パウロ・フォンセッカ監督期に続き、ロペテギ監督下でも優勝トロフィーを掲げられず、2シーズン連続で主要タイトル無冠に終わったポルト。しかし、CLではベスト8と大躍進を果たし、バイエルン相手にホームで3-1と歴史的な勝利を挙げたロペテギの実力を、ピント・ダ・コスタ会長は高評価。ミランやレアルなど国外クラブからの関心が集まったが、会長が売却不可の姿勢を貫いた。来季の続投は濃厚である。今季は、監督の意向により多くの新選手がレンタルで加入し、連携面を含めたチーム作りに時間を費やした。来季のチームの完成度には期待がかかるが、ポルトの監督に就任した宿命であろうか、例年通りに主力選手の退団に頭を抱えている。不動のRSBダニーロと、中盤を支えたカゼミロのレアル行き(後者はレンタルバック)の影響は大きく、特筆すべきは3年連続リーグ得点王に輝いたジャクソン・マルティネスの退団であろう。このリーグ最強ワントップの個人技で「何とかなった」試合は、枚挙にいとまがない。歴代史上最高のエース退団により、ロペテギ流チーム作りの手腕が再び試されることになる。仮にワントップの後任人事に失敗し、勝ち星を落とすような状況が続いたとしたら、会長から高評価を得ている監督の電撃解任というシナリオも絵空事ではない。

<3位 スポルティング>
マルコ・シウバ(来季:オリンピアコス)
→ジョルジ・ジェズス(前:ベンフィカ)

スポルティングに7年ぶりのタイトルをもたらしたマルコ・シウバが、クラブ会長ブルーノ・デ・カルバーリョとの不仲を理由に解任された。両者は、プレシーズンにはすでに方向性の食い違いを感じていたようである。サポーターからも愛されていたポルトガルNo.1若手監督の解任については、勿体無いの一言に尽きる。監督とクラブ間の契約破棄に関する交渉が難航したが、先日ようやく双方が合意。フリーの身になったマルコ・シウバは、ビトール・ペレイラ現フェネルバフチェ監督(元ポルト監督)の後任として、ギリシアのオリンピアコスへ移籍。オリンピアコスからスポルティングの監督へ就任したレオナルド・ジャルディン現モナコ監督とは、真逆方向の移籍が実現した。

後任には、ベンフィカのジョルジ・ジェズスを電撃獲得。ミランやレアルなど国外ビッグクラブへの監督就任も噂された中、ライバルチームへの歴史的な禁断の移籍を選択した。しかし、同監督は根っからのスポルティンギスタであり、青年期はユースチームに所属し、トップチームでプレーした経歴も持つ。キャリアの終盤に心のクラブを率いたいと願うのも当然か。ホームスタジアムで行われた就任会見では、満員のソシオが見守る中、「眠っているライオンを起こさなくてはならない!」と力説した。国内有数のワールドクラスの名将が、ベンフィカとポルトに遅れをとる3強の一角を、宣言通りに復権へと導くのか。それとも、マルコ・シウバという若き実力者の解任が凶と出るのか。来季もスポルティングの動向には大注目だ。

<4位 ブラガ>
セルジオ・コンセイサオン
→パウロ・フォンセッカ(前:パソス・デ・フェレイラ)

リーグ4位と大健闘ながら、コンセイサオンを解任。ポルトガルカップ決勝のスポルティング戦で、試合を圧倒的優位に運びながらまさかの敗北を喫したのが、会長の逆鱗に触れたようだ。

後任には、パソスを率いたパウロ・フォンセッカを指名。2年契約を結んだ。今季は、愛するクラブを8位に躍進させ、前年にポルトで失った評価を取り戻した。「パソスで満足しており、その愛情を超えるほどのプロジェクトが提示されない限りは、チームを離れることはない」という趣旨の発言をしていたが、ころっと移籍。ブラガが抱く野心は相当なものだったのだろう。自身2度目となるビッグクラブでの挑戦となる。ポルトでの反省を活かし、有力選手の多いチームをうまくまとめることができれば、3強撃破も夢ではない。弱小クラブを3位へと躍進させた「パソスの奇跡」を再現したい。

<5位 ギマラインス>
ルイ・ビトーリア(来季:ベンフィカ)
→アルマンド・エバンジェリスタ(前:ギマラインスB)

ルイ・ビトーリアをベンフィカに引き抜かれたギマラインス。注目の後任には、Bチームのアルマンド・エバンジェリスタを昇格させた。41歳の同監督は、6年間Bチームを率いた、まさにチームを知る男。トップチーム昇格を果たしていきなりELにも挑戦する。Aチーム経験の浅さが足を引っ張らないと良いが。

<6位 ベレネンセス>
ジョルジ・シマオン(来季:パソス・デ・フェレイラ)
→サー・ピント(前:アトロミト(ギリシア))

昨季は辛うじて降格を免れたベレネンセスが、今季はEL出場圏内の6位に大躍進。シーズン途中に暫定指揮を執ったジョルジ・シマオンはパソスへ移籍。新監督サー・ピントと2年契約を結んだ。同監督は、42歳と若手ながら、スポルティングやレッドスターなどを率いた過去を持つ経験豊富な人物。元ミランのガットゥーゾが監督就任して注目を集めた、ギリシアのOFIクレタを、彼の前に指揮した監督でもある。躍進の体制は整った。ELとリーグの両立が鍵となる。

<7位 ナシオナル>
マヌエル・マシャード(続投濃厚)

昨季の5位に続き、今季も7位と健闘。マシャード監督への信頼は厚く、今季も残留が既定路線。

<8位 パソス・デ・フェレイラ>
パウロ・フォンセッカ(来季:ブラガ)
→ジョルジ・シマオン(前:ベレネンセス)

パウロ・フォンセッカがチームを3位という奇跡の順位に導いたのも今は昔。クラブの英雄がポルトの監督に就任した昨季は、最下位から2番目の15位に沈んだ。そこで、今季はフォンセッカを呼び戻し、クラブと監督自身の名誉回復に尽力。無事、上位に返り咲いた。ポルトでは不遇の時を過ごした同監督も汚名を返上。移籍市場を賑わす人気監督となり強豪ブラガへ羽ばたいた。

後任には、昨季ベレネンセスの監督に途中就任し、9試合を指揮したジョルジ・シマオンを抜擢。38歳という来季の1部リーグ最年少タイ監督に、英雄フォンセッカの再現を託した。英雄が去りチームが大暴落した昨季の再現だけは避けたいところ。

<9位 マリティモ>
イボ・ビエイラ(続投濃厚)

パウロ・ベントのもとでポルトガル代表アシスタントコーチを務めたレオネル・ポンテスが、馴染みのないクラブチームを率い、失敗。目標の上位進出とはならずも、後任のイボ・ビエイラがチームを立て直した。すでに同監督主導でチームの補強が行われており、プレシーズンのフランス遠征も決定。続投は濃厚であろう。カルロス・ペレイラ会長が掲げた目標であるEL出場圏内の6位を目指す。

<10位 リオ・アベ>
ペドロ・マルティンス(恐らく続投)

リーグ序盤の勢いはどこへ。上位躍進を意気込んだものの、最終的には昨季とあまり変わらない10位に落ち着いた。前監督ヌーノ・エスピリト・サントは、移籍先のバレンシアで高評価を得ており、ペドロ・マルティンスとしては、現監督の威信を、サポーターを始めポルトガル全土に見せつけたいところ。ただ、今のところは監督について移籍の噂も解任の噂もなく、注目度が低い感は否めない。

<11位 モレイレンセ>
ミゲル・レアル(続投)

昇格初年度ながらリーグ11位と、思いの外、上位をキープ。その功績が認められ1年間の契約更新。

<12位 エストリル>
ファビアーノ・ソアレス(続投)

マルコ・シウバが築き上げたエストリル帝国を、大方の予想通りジョゼ・コウセイロが崩壊させ、途中解任。マルコ・シウバのテクニカルチームにも所属していたブラジル人ファビアーノ・ソアレスが、暫定監督としてチームを降格の危機から救った。

新監督が決定しないままプレシーズンに突入し、早くも出遅れた感があった中、ファビアーノ・ソアレスの続投が明かされた。今季限りの暫定監督のはずであったが、このタイミングでの残留発表。後任が見つからず、やむを得ない選択だったのかと推測せずにはいられない。マルコ・シウバが、3強に肉薄するチームに育てたエストリルを、再び2部常連の弱小チームに戻すことだけは避けたい。

<13位 ボアビスタ>
プティ(続投) 

ポルトガル代表の功労者プティが、1年の契約延長を果たした。2006年ドイツワールドカップで、ポルトガル代表の一員としてベスト4を達成したのは記憶に新しい。2012年からボアビスタで選手兼監督を務め上げ、昨季は3部からの1部特殊昇格(八百長の疑惑が晴れたため)に貢献。今季は1部初年度ながら13位と大健闘した。来季も1部残留が現実的な目標だろう。

<14位 ビトーリア・セツバル>
ブルーノ・ヒベイロ
→キン・マシャード(前:トンデーラ)

今季は、ドミンゴス・パシエンシアが結果を残せずに途中解任。ブルーノ・ヒベイロがチームを残留へ導いた(パシエンシアは来季よりアポエルの監督に)。来季は、トンデーラを2部優勝に導いたキン・マシャードに指揮を託す。2部優勝の勢いそのままに、上位戦線に食い込みたい。

<15位 アカデミカ>
ジョゼ・ビテルボ(続投濃厚)

パウロ・セルジオの途中解任に揺れたアカデミカは、ジョゼ・ビテルボのもと、何とか残留を決定。ジョゼ・エドゥアルド・シモインス会長が、同監督への信頼を強調しており、残留は濃厚。

<16位 アロウカ>
ペドロ・エマヌエル(来季:アポロン・リマソール(キプロス))
→リト・ビディガル(今季:ベレネンセス途中解任)

ポルト時代にアンドレ・ビラス・ボアスの元でアシスタントコーチを務めたペドロ・エマヌエルが、キプロスへ移籍。今季ベレネンセスを途中解任されたリト・ビディガルが新監督に就任した。同監督は、昨季のベレネンセスを残留に導いた「残留請負人」としての期待がかかる。来季も弱小クラブを1部残留に導くのが使命だ。

<2部1位 トンデーラ>
キン・マシャード(来季:ビトーリア・セツバル)
→ビトール・パネイラ(前:バルジン)

チームを1部昇格に導いたキン・マシャードが、セツバルに引き抜かれた。後任には、49歳のビトール・パネイラを招聘。今季シニアリーグ所属のバルジンをポルトガル2部リーグに昇格させた手腕が評価され、2013年10月以来のトンデーラ復帰となった。同監督は、ポルトガル代表では44試合出場のキャリアを誇るものの、監督としては、ポルト近郊のバルジンやゴンドマルなど弱小クラブから抜け出せていなかった。強豪並み居る1部での実力は、かなりの未知数と言えよう。

<2部2位 ウニアオン・ダ・マデイラ>
ビトール・オリベイラ
→ルイス・ノートン(前:シャービス)

ウニアオンを1部昇格に導き、2部リーグ最優秀監督に輝いたビトール・オリベイラ。61歳の老将は、2012-13シーズンのアロウカや、2013-14シーズンのモレイレンセなどを含め、15回の2部リーグ挑戦において、8つのチームを昇格へ導いたことになる。2部クラブの昇格成功率が53%にも上る「昇格請負人」は、任務を終えお役御免となった。

老将の後任として、今季マリティモを途中解任されたレオネル・ポンテス元ポルトガル代表アシスタントコーチなどに興味を抱いたが、最終的には前監督と同じ61歳のルイス・ノートンと1年契約を結んだ。同監督は、ベンフィカB、ビトーリア・セツバル、ビトーリア・ギマラインス、ギニアビサウ代表などを率いた経歴を持つ。昨季は2部のシャービスを率いていた。経験豊富な指揮官のもと、まずは1部残留を果たしたい。

<注目監督ベスト3>

1位 ジョルジ・ジェズス(スポルティング)
愛するクラブへ禁断の移籍を遂げた。ここ10数年低迷する3強の一角を、真の強豪に成長させることが使命である。ベンフィカで3度のリーグ優勝に輝いた手腕に、全スポルティンギスタの期待がかかる。彼が去ったベンフィカが失墜しないかどうかにも注視したい。

2位 パウロ・フォンセッカ(ブラガ)
ポルトでは失意のシーズンを過ごしたが、その実力はパソスで証明済み。リーグ3位となった「パソスの奇跡」を、新チームであるブラガで再現したい。3強の一角を崩す可能性は十分にある。今季の大注目ポイントだ。

3位 ジョルジ・シマオン(パソス・デ・フェレイラ)
9試合ながら、ベレネンセスの大躍進に貢献。38歳という若さで、実力者パウロ・フォンセッカの後釜を務めることに。まずは、今季同監督が築いたチームを維持すること。そこに自分自身のスタイルを融合させ、結果を残すことができれば、若さを武器に一気に注目監督の仲間入りを果たす可能性も。過去3年間で、3位、15位、8位と浮き沈みの激しいチームに安定をもたらしたい。

<年齢順>
38歳 プティ(ボアビスタ)
38歳 ジョルジ・シマオン(パソス)
39歳 イボ・ビエイラ(マリティモ)
41歳 エバンジェリスタ(ギマラインス)
42歳 サー・ピント(ベレネンセス)
42歳 フォンセッカ(ブラガ)
44歳 ペドロ・マルティンス(リオアベ)
45歳 ルイ・ビトーリア(ベンフィカ)
45歳 リト・ビディガル(アロウカ)
48歳 ロペテギ(ポルト)
48歳 キン・マシャード(セツバル)
49歳 ビトール・パネイラ(トンデーラ)
49歳 ファビアーノ・ソアレス(エストリル)
50歳 ミゲル・レアル(モレイレンセ)
53歳 ジョゼ・ビテルボ(アカデミカ)
59歳 マヌエル・マシャード(ナシオナル)
60歳 ジョルジ・ジェズス(スポルティング)
61歳 ルイス・ノートン(ウニアオン)

ちなみに...
マルコ・シウバ(オリンピアコス)がスポルティングの監督に就任した際の年齢は36歳。ビラス・ボアス(ゼニト)のポルト監督就任に至っては32歳の時。両者の特異的な若さが際立つ。

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2015年07月03日

「ポルトガル・ドリームチーム」を推し進める3クラブ

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近年、ポルトガルリーグ出身者の世界的ブランドが急上昇している。議論の余地はあるものの、世界最高の選手はポルトガル人であり、世界最高の監督もポルトガル人、そして、世界最高の代理人すらもポルトガル人であるのだから、このような「ポルトガル・ブーム」は、至極当然の流れと言えよう。

ポルトガルリーグから世界へ羽ばたいた人材が 、期待に違わない活躍をしている事実もまた、この風潮を加速させている。ベンフィカでリーグMVPに輝いたマティッチは、すでにチェルシーには欠かせない、世界でも有数のプレーヤーに成長した。ブラジルワールドカップで得点王に輝き、名門レアルの10番として迎え入れられたポルト出身のハメス・ロドリゲスは、現在のフットボールシーンを代表する若手スター選手の1人である。他にも、ベンフィカからアトレティコの守護神となったオブラクや、バレンシアの躍進を支えたロドリゴやエンゾ・ペレスなど、例を挙げ出したらキリがないほどに、ポルトガルリーグ出身の選手たちが、世界各国で躍動している。

そんな中で、欧州の数カ国においてポルトガルリーグの出身者を掻き集めて、「ポルトガル・ドリームチーム」なるものを形成せんとしているクラブが存在している。スペインのバレンシア、フランスのモナコ、そしてトルコのフェネルバフチェである。これらクラブの共通点は2つ。まず、どのクラブもポルトガル人監督が指揮を執っていること。そして、強靭な財務基盤を武器に青田買いを実行していることである。特に、前者に関連して、世界最高の代理人であるジョルジ・メンデスの影響力は大きい。この敏腕代理人の傘下には、ポルトガルリーグ出身の監督と選手が数多く所属している。そのネットワークを活かし、各国のポルトガル人監督のもとへ有力なポルトガルリーグ出身選手を送り届けているのだ。

そこで今回は、「ポルトガル・ドリームチーム」の実現に挑む、スペイン、フランス、そしてトルコの3クラブに迫った。3クラブともに、将来有望な若手ポルトガル人監督が指揮を執っており、今後もチームのポルトガル化を推し進めると予想されるクラブである。

<スペイン>
バレンシア

・監督 : ヌーノ・エスピリト・サント(元リオ・アベ監督)
2つの国内カップ準優勝を置き土産にリオ・アベからバレンシアへ。新オーナーのピーター・リム氏とジョルジ・メンデスの繋がりは強固であり、その影響からバレンシアの監督に抜擢された。今季は、就任初年度ながらリーグ4位に輝き、高評価を受けた。

・ポルトガルリーグ出身の所属スター選手
ロドリゴ、アンドレ・ゴメス、エンゾ・ペレス(以上、元ベンフィカ)、オタメンディ(元ポルト)
リオ・アベ時代に手を焼いたポルトガルリーグのスター選手をベンフィカから強奪。おそらくリオ・アベ時代から自チームに欲していたのだろう。弱小クラブでは叶わず、豊富な資金力を誇るバレンシアに移籍したことで、彼らを指揮する夢を叶えた。

・獲得を狙うポルトガルリーグのスター選手
1. ダニーロ・ペレイラ(ブラガ所属)
U-20ブラジル代表キャプテン。ユベントスも獲得を狙う。
2. イスラム・スリマニ(スポルティング所属)
これまたリオ・アベ時代に手を焼いたセンターフォワード。スポルティングでは不動のエースストライカー。

<フランス>
モナコ

・監督 : レオナルド・ジャルディン(元スポルティング監督)
低迷していたスポルティングをリーグ2位に導き、モナコからヘッドハンティングされる。CLでもベスト8と躍進を果たし、その名を全世界に轟かせた。3チームの中では、最もポルトガル化推進の噂が強い。

・ポルトガルリーグ出身の所属スター選手
リカルド・カルバーリョ、ジョアン・モウティーニョ(以上、元ポルト)、ベルナルド・シウバ(元ベンフィカ)。かつては、ラダメル・ファルカオやハメス・ロドリゲスも所属(元ポルト)。

・獲得を狙うポルトガルリーグのスター選手
1. ウィリアン・カルバーリョ、アドリエン・シウバ、カルロス・マネ(スポルティング所属)
スポルティング時代に率いたチームの主軸を、こぞってモナコへ呼び寄せようと試みる。監督のアイディアを理解する中盤の2選手、すなわち、U-21欧州選手権でMVPに輝いたウィリアンとスポルティングの要アドリエンは、喉から手が出るほど欲しいことだろう。
2. カルロス・エドゥアルド(ポルト所属)
ポルトからレンタルされたフランスのニースにて、2桁得点を記録。ポルトへ帰還予定だが、横奪を狙う。
3. イバン・カバレイロ(ベンフィカ所属)
今季はベンフィカからデポルティボにレンタルされていた。U-21欧州選手権でベストイレブンに選ばれる活躍を見せた。獲得間近との噂も。
4. バレンシアと同じく、ダニーロ・ペレイラと、スポルティング時代の教え子イスラム・スリマニも。

<トルコ>
フェネルバフチェ

・監督 : ビトール・ペレイラ(元ポルト監督)
ポルトで2年連続リーグ優勝、オリンピアコスでも就任1年目で王者に。もっと評価されても良さそうだが。来季からは、フェネルバフチェを率いる。

・ポルトガルリーグ出身の所属スター選手
ブルーノ・アウベス、ラウール・メイレレス(元ポルト)
ポルトガル代表を長らく支えた2枚看板。彼らもポルトガルリーグ出身選手の入団を望んでいることだろう。

・獲得を決めたポルトガルリーグの有力選手
ファビアーノ、アブドュライエ(元ポルト)
指揮官の古巣ポルトから、準レギュラー〜レギュラー格の2選手をレンタルで獲得。

・獲得を狙うポルトガルリーグのスター選手
ナニ(昨季スポルティング所属)、バレンシアとモナコと同じくイスラム・スリマニ(スポルティング)
特に、ナニは獲得間近とも。クアレスマの影響もあり、トルコではポルトガル人ウイングは高評価。

以上、ポルトガル人指揮官のもと、チームのポルトガルリーグ化を進める3チームを紹介した。それぞれの監督に、ポルトガル時代から目をつける選手がおり、資金力のあるチームへ移籍したことを引き金に、こぞって彼らの獲得に向かう様は実に興味深い。

今後も、バレンシア、モナコ、フェネルバフチェの3クラブの名前が、ポルトガルメディアを賑わすことが予想される。エスピリト・サント、レオナルド・ジャルディン、ビトール・ペレイラの3者が、どのような「ポルトガル・ドリームチーム」を組織していくのか。注意深く見守りたい。

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2015年07月02日

【過去コラム再掲】ポルトガルサッカーの縮図としてのFCポルト

 現在のサッカーシーンにおいて、いまや、ポルトガルは世界中の注目を一身に集める巨大勢力となった。欧州サッカー連盟(UEFA)が査定するリーグランキングでは、2013-14シーズンにイタリアを抜いて4位となり、 クラブランキングでは、名だたる名門クラブが形成するベスト10に、SLベンフィカ(5位、以下ベンフィカ)とFCポルト(9位)の2チームがランクインしている。 世界の一流クラブで中心選手として活躍するポルトガル人も急増し、ポルトガル人監督という存在は、一種の名監督としてのブランドとなりつつある。
 しかし、日本でのポルトガルサッカーの知名度は決して高いとは言えない。筆者が「Twitter」にて行った独自アンケート では、実に61パーセントもの回答が、選手や監督、クラブなどといった内容の薄い固有名詞のみという結果となった。すなわち、筆者のTwitterをフォローしている比較的サッカーに精通している層ですら、ポルトガルサッカーの特徴を掴みきれていないのである。
 FCポルトやベンフィカなどの世界的に有名なポルトガルクラブの状況は、ポルトガルサッカーのそれと酷似している。言い換えれば、これらクラブはポルトガルサッカーの現状を映す鏡なのである。本レポートの目的は、日本人の理解が乏しいこれらクラブの中でも、筆者が実際に在住した経験のある街のクラブ、FCポルトを詳細に解説し、クラブという枠を超えてポルトガルサッカー全体にも適用し得る提言を示すことにある。
 
<FCポルト概要>
 FCポルト、正式名称は「Futebol Clube do Porto」。1893年、ポートワインの貿易に従事していたニコラウ・デ・アウメイダ氏が、イングランドで出会ったサッカーに魅了され、故郷ポルトにサッカークラブを設立したのが始まりである。
 ポルトガル1部リーグの優勝経験がある5クラブ の一角であり、ベンフィカ、スポルティングCP(以下、スポルティング)とともに、ポルトガルの「3強(Três Grandes)」と謳われている。現在のピント・ダ・コスタ氏が1982年に会長就任してからは、リーグの5連覇と4連覇を達成し、近年ポルトガルで最も多くのタイトルを獲得しているクラブである。
 かつてのホームスタジアム「Estádio das Antas」は、欧州選手権(EURO)2004のポルトガル開催に伴い、現在のホームスタジアム「Estádio do Dragão」に建て替えられた。創立10周年を迎えた2013年には、クラブの潤沢な資金力をもとに、隣接するミュージアム「Museu Futebol Clube do Porto」が建設され、クラブの近代化が推進されている。
 
<FCポルトの実力>
「近年ポルトガルで最も多くのタイトルを獲得しているクラブである」と記述したが、それでは、FCポルトは世界的に見てどれほどの強豪クラブと言えるのか。国内リーグやヨーロッパ大会での戦績から紐解いていく。
 まず、国内リーグに関して言えば、近年FCポルトが圧倒的な強さを見せつけている。2002年から2014年の12シーズンにかけてのリーグ優勝は、FCポルトとベンフィカの2クラブが独占しており、事実上の「2強(Dois Grandes)」体制となった。その中でFCポルトは4連覇と3連覇を含む9回のリーグ優勝を果たし、同3回のベンフィカを大きく上回る。
 続いてヨーロッパ大会に関してだが、並みいる超名門クラブの中でも、FCポルトはその存在感を十分に発揮している。ヨーロッパ各国の上位チームが一堂に会する「チャンピオンズ・リーグ(以下、CL)」は、欧州のナンバーワンクラブを決める由緒正しき大会である。近年の優勝クラブは、スペインのバルセロナとレアル・マドリード、イングランドのマンチェスター・ユナイテッドやリヴァプール、それからチェルシー。イタリアのミラノに本拠地を置く2クラブ、ACミランとインテル・ナシオナル、そして、ドイツのバイエルン・ミュンヘンといった、サッカーファンならば誰もが知る超名門クラブである。このようなクラブでしか成し得ない優勝という快挙を、FCポルトは2003-04シーズンに達成し、世界を驚愕させた。
 また、CLへの出場が叶わなかった上位チームが参加する、CLの下位リーグ「ヨーロッパ・リーグ(以下、EL)」では、2002-03シーズンと2010-11シーズンに優勝を果たしており、同大会で毎年のように躍進するポルトガルクラブの一角を担っている 。
 今シーズン(2014-15)も、国内リーグではベンフィカに次ぐ2位につけており、CLのグループステージでは、4勝2分0敗の成績で首位通過し、ポルトガルのクラブでは唯一決勝ステージに駒を進めた。(編集後記:戦績は本記事執筆当時のもの。最終的には、CLベスト8、リーグ2位という結果に)国内ではベンフィカと頂点を争い、ヨーロッパの大会でも毎年のように上位進出を決めている。これが現在のFCポルトの実力である。
 
<「人材供給地」としてのFCポルト>
 FCポルトがヨーロッパの大会で勝ち進むに十分な実力があるのは確かだが、CLで優勝候補に挙げられるほどのものではないというのが事実である。十数年も昔の偉業であるCL優勝が、現在でもポルティスタの間で語り継がれているのは、それほど稀有な「大事件」だったからであろう。今年のCLでも、FCポルトが優勝すると心底信じて疑わないのは、ポルティスタの中でも何人いるだろうか。愛するクラブを、前述のバルセロナやレアル・マドリード、バイエルン・ミュンヘンといった優勝候補の常連チームと肩を並べる存在だと言うのは、いささかおこがましい。
 なぜFCポルトはこれらの超名門クラブと成り得ないのか。その謎を解明するには、反対になぜこれらクラブが超名門と言われる実力を備えているのかという疑問を究明する方が手っ取り早い。
 チームとは選手個々の能力の総和である。そこにコンビネーションやチーム戦術などの要素が絡み合うことで相乗効果が生まれる。しかし、4年間同じメンバーでサッカーをしている大学サッカー部と、年に数回しか集まらない日本代表チームが試合をすれば後者が圧倒的に勝利するのが常であるように、概ねチームの強さは選手個々の実力に比例する。
 すなわち、超名門クラブの選手たちは世界トップレベルの実力を備えており、これらクラブはそのような選手たちの集まりなのである。名門クラブが、膨大な資金力や世界的なブランド力を武器に各国の名選手を青田買いし、チーム力を強化する傍らで、当然彼らに「搾取される」側のクラブが存在する。その代表例がFCポルトなのであり、所属する数名のスーパースターたちが毎年のように、名門クラブに引き抜かれる。これが、FCポルトが超名門クラブに成り得ない所以なのである。
 全世界の大半のクラブが、限られた名門クラブへ人材を供給している。そして、近年の選手や監督の供給量において、FCポルトの右に出るクラブはない。FCポルトは世界で最も優れた人材供給地と言っても過言ではない。
 近年の代表例として5名の人物を挙げよう。まずは、かつてJリーグでもプレーしたブラジル代表フォワードのフッキである。2008年に東京ヴェルディからFCポルトへ移籍したフッキは、その年、ポルトガルリーグの年間若手最優秀選手賞を受賞した。2010-11シーズンにはリーグの得点王とMVPをダブル受賞し、翌年にも2年連続となるリーグMVPを獲得。ポルトガルリーグの最優秀選手は、推定5000万ユーロ(当時、約50億円)という大金を残してロシアのゼニトへ移籍した。 
 フッキと同時期にFCポルトで活躍したのが、ラダメル・ファルカオとハメス・ロドリゲスのコロンビア代表コンビである。前者は2010-11シーズンにFCポルトが優勝したELで得点王に輝き、現在は「世界最高峰の9番」として引く手あまたの中、マンチェスター・ユナイテッドで活躍している。後者はFCポルトで芽を出し、現在最も注目を集める若手スーパースターのうちの一人である。510万ユーロでFCポルトにやってきた青年は、ブラジルワールドカップでの活躍が評価され、8000万ユーロ(当時、約110億円)という歴史的な移籍金で、レアル・マドリードの10番として迎え入れられた。 
 FCポルトは優秀な監督をも輩出している。現在世界最高の監督の一人と目され、ポルトガル人監督というブランドを確立したジョゼ・モウリーニョが、全世界にその名を知らしめたのが、FCポルトでの2003年のEL優勝、続く2004年のCL制覇である。また、上記の3選手を育て上げ、自身も名監督の仲間入りを果たしたアンドレ・ビラス・ボアス現ゼニト監督は、近年の世界各国で活躍する若手ポルトガル人監督の代表格である。 彼は、2010-11シーズンに、愛するクラブFCポルトで国内リーグを無敗優勝し、史上最年少でヨーロッパ大会を制すなど、記録ずくめの4冠という偉業を成し遂げた。
 現在世界のサッカーシーンでは、FCポルトやベンフィカを始め、多くのポルトガルリーグ出身の選手・監督が活躍している。国際サッカー連盟(FIFA)が発表した2014年FIFA/FIFPro(国際プロフットボール選手協会)ワールドベストイレブンには、2年連続でバロンドールを獲得したクリスティアーノ・ロナウド(元スポルティング)を筆頭に、4人のポルトガルリーグ出身者が選出された。 このような状況はポルトガル国民にとって大きな誇りである。しかし一方で、ポルトガルサッカー界に深刻な問題を引き起こしているのもまた事実である。
 
<FCポルトの未来>
 FCポルトを「人材供給地」と言えば聞こえは良い。しかし実情は、有望な選手や監督たちからすれば、名門クラブへ飛躍する前の「踏み台」であり、これら強豪クラブにとっては、優れた人材を輩出してくれる、都合のいい「生産請負工場」なのである。その結果、FCポルトには「ポルトガル人の空洞化」とも言える深刻な事態が生じてしまった。
 「ポルトガル人の空洞化」を引き起こす最大の要因は、国外クラブから引き抜かれた有力なポルトガル人選手の後釜と成り得る、若手ポルトガル人選手が現れないことにある。そして、彼らの台頭を妨げ、空洞化を引き起こす最大の根源が、クラブの外国人化なのである。
 国内リーグにおいて勝利を義務付けられたFCポルトは、ポルトガル人よりも身体能力に優れ、チームを勝利に導く可能性の高い外国人選手に頼るようになってしまった。実際に、今シーズンのFCポルトのメンバー構成を見てみると、登録メンバー28名のうちポルトガル人選手はたったの4名しかおらず、残りの24名は全て、スペインやブラジル、コロンビアなどといった国外出身の選手たちが名を連ねる。さらに、2014年10月19日に行われた「ポルトガルカップ」3回戦の対スポルティング戦では、FCポルトのスターティングメンバー11人の中に、ポルトガル人選手が一人も含まれないという「珍事」に見舞われてしまった。
 今後も、現在のように外国人選手を採用し続けると、ポルトガル人若手選手がプレーする機会は減る一方である。それが代表の弱体化を引き起こすのは言うまでもなく、FCポルトが外国人選手を育て上げることで他国の強大化を助長することになってしまうのは、なんとも皮肉なものである。
 この空洞化現象は、何もFCポルトに限ったものではない。ポルトガルサッカー界全体に共通するものである。2014年ブラジルワールドカップをグループリーグ敗退で終え、エースであるクリスティアーノ・ロナウドという一人のタレントに頼り切っているポルトガルが今後もヨーロッパでのプレゼンスを維持するために、国産若手選手の育成は避けては通れない道なのである。簡単なことではないだろう。しかし、彼らが母国リーグで活躍し、リーグがより競争力の高い魅力的なものになれば、多くのポルトガル人選手が名門クラブの誘いを断り残留を決断するようになるかもしれない。外国人選手の売却で得た資金をポルトガル人選手の年棒に充てれば、彼らを引き留めることができるかもしれない。
 かつて世界のスーパースターのためのリーグであったイタリアセリエAの凋落を、20年前の誰が予想しただろうか。サッカーではすべてが起こり得る。そのためには、FCポルトを始めとする各クラブが、外国人選手に頼らずに若手ポルトガル人を登用する、勇気ある英断が求められる。
 
<現在ヨーロッパで活躍する40歳前後のポルトガル人監督>
(2015/07/02編集)
マルコ・シウヴァ(元スポルティング、ポルトガル)
パウロ・フォンセッカ(ブラガ、ポルトガル)
レオナルド・ジャルディン(モナコ、フランス)
ヌーノ・エスピリト・サント(バレンシア、スペイン)
パウロ・ソウザ(フィオレンティーナ、イタリア)
ヴィトール・ペレイラ(フェネルバフチェ、トルコ)など
 
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2015年06月17日

【過去コラム再掲】ポルトガル人監督流ローテーション術

2013-14シーズン中に執筆した記事です。「今シーズン」の記載にお気を付けください。
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シーズンが終盤へ進むにつれて、多くのチームで目撃されるようになる「ローテーション」。
 
皮肉にも、カップ戦を勝ち上がるような上位チームほど、比例して選手たちの体内には疲労が溜まり、この「ローテーション」、つまり、レギュラーメンバーを温存して試合に臨むことを強いられるようになります。
 
そしてこれこそが、上位チームが下位チームに負けるシーズン終盤の風物詩である「ジャイアント・キリング」という逆転現象を生み出す原因のひとつとなっているのです。
 
アスリートの疲労を完全に取り除くには、4日間の休養が必要であると言われています。(※大学でスポーツ学を学ぶポルトガル人の友人談)
すなわち、週に2試合をこなすような強豪チームの選手たちにとっては、シーズン中に100%フレッシュな状態を維持することは、ほぼ不可能に近く、どこかのタイミングで休養を取らなくては怪我をする恐れがあるということです。
 
では、多くの監督たちは、どのようにしてこのローテーションを用いて選手たちの疲労を和らげているのでしょうか。今回はポルトガル人監督のローテーション術をザッとまとめてみました。
 
まず、お話を進める前振りとして。僕はローテーションには、いわば博打的な要素が含まれていると考えています。正真正銘の博打という意味ではありません。この考えを頭の片隅っこに置いて読み進めていただきたく思います。
 
例えば、ミッドウィークに重要なカップ戦が待ち構える週のリーグ戦でローテーションを採用するとします。
 
すでにリーグにおける優勝チームやCL出場権獲得チームが確定していた場合、この週末のリーグ戦を、(言葉が悪いですが)「消化試合」と見なして、ローテーションをする場合には何も問題ありません。勝てればなおよいですが、負けてもチームの順位には影響がないからです。
 
実際に、今年のポルトガルリーグ最終節、ポルト対ベンフィカ戦において、すでにリーグ優勝を決め、この試合の数日後にELの決勝を控えていたベンフィカは、ローテーションを採用してポルトのホームスタジアムに乗り込みます。そして、Bチームの選手を中心としたほぼ2軍のメンバーで戦い抜きました。
 
結果はポルトの2-1の勝利でしたが、リーグ優勝を決めたベンフィカからすれば、この試合の勝敗よりも数日後のEL決勝のために選手を温存することの方がずっと重要でした。
 
このベンフィカのジョルジ・ジェズス監督は、ローテーションを頻繁に採用する監督です。
 
例えば、今年の4月末にEL準決勝ユベントス戦を2週間連続で控えていた週の合間のリーグカップ準決勝ポルト戦。ホーム&アウェーのない一発勝負の試合において、ベンフィカは主にカップ戦要因と化したカルドソと、チーム得点王のリマの2人をツートップに据えました。試合の半ばにベンフィカMFが1人退場となり、ツートップのどちらかを交代することを強いられたとき、ジョルジ・ジェズス監督はカルドソではなくチーム得点王であるリマを交代させたのです。
 
そのときのことを、後の記者会見でこう語ります。
 
「交代させるべきはリマではなくカルドソだった。しかし、リマは木曜日に向けてフレッシュな状態でなくてはならなかった。カルドソを残すというリスクを負ったが、もっと先を、木曜日のELを頭に入れていた」
 
結果は、90分で決着がつかず、PK戦の末ベンフィカが決勝進出。次のEL 2legユベントス戦もリードを守り切って決勝に駒を進めたように、このローテーションはまさに理想的な結果となりました。
 
ジョルジ・ジェズス監督は、このように、チームの数人を入れ替えたり、試合途中に次の試合を見据えて重要な選手を交代させるというような策を頻繁に導入します。リーグ最終節で実施した総入れ替えローテーションなどの大きなリスクは滅多に負いません。なるべく少ないリスクでローテーションを頻繁に行い、重要なカップ戦をフルメンバーで戦うことを好みます。ごくたまに、例えば消化試合のようなリスクのない状況に限り、大胆なローテーションを採用することもあるのです。
 
このジョルジ・ジェズス監督以上にローテーションの「信仰者」とされるのが、チェルシーを率いるジョゼ・モウリーニョ監督です。
 
彼は優勝がかかった大事な試合でさえ、メンバーを総入れ替えするような大胆なローテーションを採用することがあります。
 
奇しくもジョルジ・ジェズス監督の前例と同じ週、チェルシーはCLアトレティコ戦に挟まれた週末に、リバプールとのリーグ優勝のかかった大一番を控えていました。しかしモウリーニョ監督はすでに自力優勝の可能性が消滅していたリーグよりもCL制覇を優先し、試合前からメンバーの入れ替えを明言します。
 
実際に、普段のスタメンを大幅に変更した、いわゆる「2軍」を送り込み、超守備的戦術を採用して2-0で勝利しました。
 
とはいってもこの「2軍」は、主に各国代表選手で形成され、プレミアリーグでもスター選手の部類に入る選手ばかりでした。確かにリーグ1位のリバプールに勝利した手腕はお見事ですが、このローテーションを採用しての勝利は、チェルシーのような、トップ選手たちで2チームを組めるほどの選手層がなくては実現しなかったことでしょう。
 
ここに僕がローテーションを博打的な要素が含まれると考える理由があります。消化試合ならローテーションを採用してもリスクはないですが、このリバプール戦のような重要な試合で採用するのは大きなリスクを伴います。もちろん負ければ「メンバーを落としたから負けた」「対戦相手に敬意を欠いている」などと四方八方から叩かれいたでしょう。もちろん監督が綿密な計算をして、勝てると踏んだ選手を送り込んでいることだろうとは思いますが、「ある意味で(ここ重要)」ローテーションは「賭け」的な要素が含まれるのではないでしょうか。
 
ポルトガル人監督の中にはローテーションを嫌う監督もいます。過去にポルトやチェルシー、トッテナムを率い、現在はゼニトの監督を務めるアンドレ・ビラス・ボアス監督です。
 
彼は、自身でもローテーションに対しては否定的な発言をしており、ポルト監督時代には、週末にリーグ・ベンフィカ戦を控える週のELベジュクタシュ戦の前日会見でこのように述べました。
 
「次のベンフィカ戦のために私がベジュクタシュ戦で選手の温存をするかって?少しも考えてないね。理由は簡単だ。私は決して選手の温存はしないからだ」
 
なぜビラス・ボアス監督はここまでかたくなにローテーションを拒否するのでしょうか。その理由も彼の発言から汲み取ることができます。
 
「気の緩みや温存はあってはならない。選手たちは、そのような『全てが解決された』というような考え方は危険なものだということをよく知っている。(次の試合では)気の緩みによるリスクは存在しないだろうと確信している」
 
ビラス・ボアス監督がローテーションを採用しない理由は簡単です。
 
サッカーは何が起こるか最後まで分からない。温存やローテーションというのは選手たちに気の緩みを与え、それが勝てる試合すらも負け試合にしてしまう。ということでしょう。
 
ではビラス・ボアス監督は、ポルトという週に2試合をこなすようなビッグクラブにおいて、どのようにしてローテーションを用いずに選手たちの疲労を取り除いたのでしょうか。答えは彼の選手交代の方法にありました。
 
ポルトガル人記者のLuís Freitas Lobo氏はビラス・ボアス監督のポルト時代の采配をこのように分析しています。
 
「チームをいじるとき、ビラス・ボアスは基本的に中盤をいじる。選手交代のタイミングは60〜75分の間だ。そして、普段の4-3-3というフォーメーションからウイングを一枚削り、4枚の中盤を据えた4-4-2(中盤ひし形or1-3)を形成するのである。こうすることで、4-3-3がチームまたは選手個人にもたらしやすい消耗や戦術的疲労を避ける。そして、この選手交代の時間も大切だ。チームは試合中に次の試合に向けた回復を始めるのである。まだ前の試合の途中だというのに。4-4-2は明らかに、ボール保持によって選手たちの休息をもたらすのである」
 
ビラス・ボアス監督の方法は、一般的なローテーション、つまり、大事な選手を温存するために交代をさせることとは違います。チーム全体の疲労感を取り除くためのシステム変更に伴い、疲労の溜まっている選手を交代するのです。
 
このように、ローテーションに対しては、ポルトガル人監督の間でも賛否両論があります。しかし一貫しているのは、どの監督も、疲労を取り除くために次の試合を見据えた選手交代を行っているということです。試合中に、「なぜあの選手が交代するんだ!?」という疑問を持つことはよくあると思いますが、このような試合の前後関係や、連続する試合の重要度、監督のローテーションへの考え方などを頭に入れながら選手交代の理由を考えると、より面白い目でサッカー観戦ができるのではないでしょうか。

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2015年06月16日

【過去コラム再掲】ドラゴンズ?学生?チェス?ーポルトガルクラブのあだ名の種類と由来

今回は、ポルトガルの各クラブがメディアで呼ばれている「あだ名」についてまとめ、その由来を追って行きます。
 
ポルトガルの新聞が、あるチームの選手を包括的に呼ぶときに、日本的な概念で、例えば「ベンフィカの選手たちは〜だった」などというような表現はあまりしません。この「ベンフィカの選手たち」という主語をひとつの単語、すなわち、あだ名で表すのです。
 
そして、このあだ名には、様々な由来があり、ひとつのチームが複数のあだ名を持つことがほとんどです。これもポルトガルサッカーの魅力のひとつではないでしょうか。
 
今回は、あだ名を
 
1.普通形
2.ユニフォームカラー形
3.地域由来形
4.特殊形
 
の4種類に分類し、それぞれに当てはまる代表例を紹介していきます。
 
1.普通形
 
普通形のあだ名は、その単語内にクラブの名前が含まれており、一目でどのクラブを指しているのかが分かります。
 
<例>
ポルト(Porto)=ポルティスタス(Portistas)
エストリル(Estoril)=エストリリスタス(Estorilistas)
マリティモ(Maritimo)=マリティミスタス(Maritimistas)
パソス・デ・フェレイラ(Paços de Ferreira)=パセンセス(Pacenses)
 
なお、語尾の「ス」は複数形を表すものであり、これがつく場合とつかない場合の両方が見られます。
 
星1︎ポルトガルではブラジルと違い、"S"は「シュ」に近い発音がされます。例えば、ポルティスタスは「ポルティ"シュ"タ"シュ"」と発音されますが、ここでは分かりやすく「ス」と明記します。
 
2.ユニフォームカラー形
 
そのクラブが着用するユニフォームがあだ名になることもあります。
 
例えば、ポルトは「アズイス・イ・ブランコス」"azuis-e-brancos"と呼ばれ、これは「青と白」を意味します。また、ベンフィカは赤を意味する「エンカルナードス」"encarnados"と呼ばれます。ちなみに"encarnados"の"carne"は「お肉」を意味するので、赤のイメージが湧きやすいですね。
 
この形で特に面白いのが、ボアビスタのあだ名です。白黒のチェックをユニフォームカラーとするボアビスタは「アシャドレザードス」"axadrezados"と呼ばれます。この単語に含まれる"xadrez"は「チェス」を意味し、ユニフォームをチェス盤に見立てたあだ名になっていることが分かります。
 
3.地域由来形
 
そのチームが拠点を置く地域の名前があだ名になることもしばしばあります。
 
例えば、ポルトから北西に位置する「ヴィラ・ド・コンデ」"Vila do Conde"をホームとするリオアベは「ヴィラ・コンデンセス」"vila-condenses"と呼ばれます。
また、ブラガは「ミニョット」"minhoto"と呼ばれるのですが、これはブラガ近辺を「ミーニョ(Minho)地方」と呼ぶことに由来します。ブラガの選手たちも「ミーニョ地方の人々」だということでしょうか。
ビトーリア・セツバルのあだ名は「サディーニョ」"sadinho"ですが、これはセツバルを流れる「サド川」"Rio Sado"から来ているのではないかと推測されます。
 
4.特殊形
 
最後の特殊形ですが、この形はそのチームを象徴する一単語で表されることがほとんどです。
 
例えば、ポルト、ベンフィカ、スポルティングはそれぞれのチームマスコットである、ドラゴン、ワシ、ライオンを意味する
「ドラゴインス」"dragões"「アーグィアス」"águias"「レオインス」"leões"と呼ばれます。これは野球に近いですね。ベンフィカをアーグィアスと呼ぶのは、楽天をイーグルスと呼ぶと似ているような気がします。
 
また、アカデミカは「エストゥダンテス」"estudantes"と呼ばれますが、これは「学生」を意味する単語です。
 
なぜ学生なのでしょうか?
 
それは、アカデミカが拠点を置く「コインブラ」は、約700年以上の歴史を持つコインブラ大学で有名なポルトガル一の学生の街だからです。チームを象徴するという意味で、その街の特徴があだ名になるのは面白い例ですね。
 
以上のように、ポルトガルのチームには様々な呼び名があります。また、例えば、ポルトは今回紹介した中でも3種類のあだ名があり、他のチームも多くのあだ名を持ち合わせています。サッカー自体とはかけ離れたことですが、チームのあだ名の由来を文化的な側面から調査していくのも、また面白い作業だと思います。
 
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日本発、ポルトガルサッカー情報!
ポルト、ベンフィカ、スポルティングを中心に、ポルトガル人関連ニュースも網羅
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2015年06月07日

スポナビ+過去記事一覧&リンク集まとめ

お引越し
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EL ポルト対ナポリ 2leg
http://www.plus-blog.sportsnavi.com/yutasaito/article/2

リーガ第24節 ポルト対ベレネンセス antevisão
http://www.plus-blog.sportsnavi.com/yutasaito/article/3

ポルトガルカップ準決勝 ポルト対ベンフィカ antevisão
http://www.plus-blog.sportsnavi.com/yutasaito/article/4

ポルトガルカップ準決勝 ポルト対ベンフィカ 1leg 戦評
http://www.plus-blog.sportsnavi.com/yutasaito/article/6

EL ポルト対セビーリャ 1leg
http://www.plus-blog.sportsnavi.com/yutasaito/article/7

ポルトガルリーグ4チームが参加するトライアウトを考察
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ポルトガルリーグ3強の移籍市場を賑わす3選手
http://www.plus-blog.sportsnavi.com/yutasaito/article/9

ドラゴンズ?学生?チェス?ーポルトガルクラブのあだ名の種類と由来
http://www.plus-blog.sportsnavi.com/yutasaito/article/10

EL準決勝2leg ベンフィカ対ユベントス -4冠に向けて3歩進んで2歩下がったベンフィカ-
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ポルトガルリーグ13-14シーズン ベストイレブンとMVPを考えよう
http://www.plus-blog.sportsnavi.com/yutasaito/article/12

ポルトガル若手No.1 マルコ・シルバ監督のエストリル退団声明
http://www.plus-blog.sportsnavi.com/yutasaito/article/13

ベンフィカを苦しめる100年間の呪縛
http://www.plus-blog.sportsnavi.com/yutasaito/article/14

ポルトガルリーグ激動の監督大移動
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ポルトガル人監督から学ぶローテーション術
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ブラジルW杯に臨むポルトガルリーグ出身の注目3選手
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レイソル田中順也、スポルティング移籍?-ポルトガル現地の声をお届け-
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田中順也スポルティング移籍決定!-高額違約金の意味とスタメンの可能性を考察-
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田中順也スポルティング移籍決定!特集Part.2-ポルトガル現地の声をお届け第2弾-
http://www.plus-blog.sportsnavi.com/yutasaito/article/20

ポルトガルリーグ2014-15シーズン3強の開幕予想
http://www.plus-blog.sportsnavi.com/yutasaito/article/21

2014-15シーズンCLはポルトガル人大歓喜!?
http://www.plus-blog.sportsnavi.com/yutasaito/article/22

新・ポルトガル代表始動
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田中順也を超える「男前」!? スポルティング監督マルコ・シウバとはいったい何者!?
http://www.plus-blog.sportsnavi.com/yutasaito/article/24

終了間際の劇的FK弾! 田中順也のリーグ戦初ゴールにポルトガルメディアが熱狂
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ポルトガルサッカーの縮図としてのFCポルト
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2014-15シーズン、ポルトガル3強の移籍市場を賑わす3名に要注目
http://www.plus-blog.sportsnavi.com/yutasaito/article/27
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2015年06月04日

2014-15シーズン、ポルトガル3強の移籍市場を賑わす3名に要注目

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ベンフィカのリーグ2連覇と共に幕を閉じた2014-15シーズンのポルトガルリーグ。今季も、注目のタレントが予想に違わず躍動し、ヨーロッパ全土のメガクラブが、ポルトガル3強から選手の引き抜きを画策している。

そこで、去年好評だった企画を再び実施。現地メディアの情報から、今オフでチームを離れる可能性が高いと推測される注目人物を、3強からそれぞれ1名ずつピックアップした。(今回は、昨季ほど移籍の噂が出ておらず、1名ずつの選出となることをご了承ください。その分、移籍実現率100%を目指します)

なお、昨季も同様の予想をし、
マルコビッチ(ベンフィカ→リバプール)
シケイラ(ベンフィカ→アトレティコ)
ロドリゴ(ベンフィカ→バレンシア)
ウィリアン・カルバーリョ(スポルティング残留)
カルロス・マネ(スポルティング残留)
マルコス・ローホ(スポルティング→マンU)
ジャクソン・マルティネス(ポルト残留)
マンガラ(ポルト→マンC)
フェルナンド(ポルト→マンC)
と、9選手中6選手の移籍が実現した。手前味噌ながら、かなり高確率な的中率を誇る企画となっている。

<ベンフィカ>
シーズン途中に、チームの中心エンゾ・ペレスがバレンシアへ移籍した。昨季も、上記の3選手以外には、マティッチ(チェルシー)やガライ(ゼニト)、オブラク(アトレティコ)など、現在メガクラブの主力として活躍する人財を多く排出した。今季も主力選手の引き抜きは避けられない。

☆ニコ・ガイタン
173cm 66kg アルゼンチン代表 27歳
推定違約金 3500万ユーロ
ベンフィカ不動の10番。中心選手として、チームのリーグ2連覇および2冠に貢献した。昨季も移籍の噂が流れた人気銘柄であり、今季もイングランド方面からの関心が絶えない。すでに代理人のジョルジ・メンデスとベンフィカ会長がロンドンとリバプールを巡り、強豪クラブとコンタクトを取ったという情報もある。

→噂される移籍先
リバプール、マンU、チェルシー、アーセナル、トッテナム、

特に、リバプールが獲得に熱心との報道。また、マンUは同選手獲得のために、ベンフィカへ、ナニを差し出す可能性があるとか。

<ポルト>
ブラジル代表ダニーロのレアル移籍がすでに決定済み。カゼミロも、レアルへのレンタルバックが濃厚だ。1番の注目は、毎年移籍の噂が絶えないエースの動向だろう。

☆ジャクソン・マルティネス
185cm 79kg コロンビア代表 28歳
推定違約金 3500万ユーロ
今季は21ゴールを挙げ、3年連続でポルトガルリーグ得点王という偉業を達成した。昨季は移籍濃厚と見られていたものの、まさかの残留。すでにポルトガルリーグのレベルを超越しており、選手自身も今季限りでのポルト退団を望んでいる。

→噂される移籍先
アーセナル、アトレティコ、バレンシア、ユベントス、マンU、トッテナム、バイエルン

中でも、アーセナル、アトレティコ、バレンシアが注目。アーセナルは契約違約金満額である3500万ユーロを用意。アトレティコは、昨季ポルトが狙っていた若手選手ラウール・ヒメネスと、今季レンタルしたオリベル・トーレスを差し出す可能性があるとか。バレンシアに関しては、ジャクソンの代理人が、最適の移籍先と明言している。敏腕代理人ジョルジ・メンデスが介入しており、移籍の可能性は限りなく高い。

<スポルティング>
カリージョやジョアン・マリオ、カルロス・マネーら若手選手の成長が際立ったシーズンであった。この中にも、移籍の噂が流れる選手が数名。

☆セドリック・ソアレス
172cm 66kg ポルトガル代表 23歳
昨季よりプチブレイクし、今季大ブレイクを果たしたポルトガル代表の右サイドバック。若手の成長が目立つスポルティングにおいても、群を抜いて安定したパフォーマンスを発揮している。23歳と年齢も若く、将来のポルトガルを背負って立つことが期待される注目選手である。自身は「契約がまだ1年ある」ことを強調したが、若手の大注目銘柄ながら市場価格はおよそ700万と格安であり、メガクラブが放っておくはずがない。

→噂される移籍先
バルセロナ、アーセナル、インテル、レバークーゼン、シャルケ、ウォルフスブルク

特に、ダニエウ・アウベスの後釜として、バルセロナが大注目。獲得候補であったポルトのダニーロをライバルのレアルに奪われ、攻撃面で貢献できるセドリックへの関心を強めている。昨季獲得を見送ったアーセナルも再び関心を示しているとか。ヨーロッパリーグでスポルティングと対戦したウォルフスブルクも獲得に興味。

繰り返すが、今季は昨季ほど多くの選手に移籍の噂が流れていない。その分、取り上げたガイタン、ジャクソン、セドリックの3名については頻繁に報じられており、その実現性も高いと推測される。ポルトガルリーグから羽ばたいたスター候補が、メガクラブで1年目から結果を残すケースが多々目撃された今シーズン。今回取り上げられた3名の移籍が実現し、来年の今頃には、メガクラブで活躍している姿を見ることができれば、この上なく嬉しい限りである。

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posted by Futebol de Saudade at 18:05 | Comment(0) | コラム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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